妙高火打周辺(新潟) 御殿山(901.6m) 2019年11月9日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 6:15 県道入口(車止め)−−6:53 最初の崩落個所−−7:01 2つ目の崩落個所−−7:16 西飛山ダム(雨具着用) 7:25−−7:31 ダム湖底−−7:41 タジマ川−−8:02 斜面取付−−8:27 地滑り上端(標高650m)−−8:52 814m峰−−9:08 830m峰西の肩−−9:49 御殿山 10:27−−11:59 830m峰西の肩−−11:10 814m峰−−11:41 タジマ川−−11:57 西飛山ダム 12:00−−12:17 2つ目の崩落個所−−12:27 最初の崩落個所−−13:04 県道入口(車止め)

場所新潟県糸魚川市
年月日2019年11月9日 日帰り
天候
山行種類籔山
交通手段マイカー
駐車場県道入口の路側に駐車
登山道の有無無し
籔の有無尾根取付から山頂まで藪。特に814m峰より先で灌木藪が深い
危険個所の有無無し
山頂の展望南側が少しだけ開ける
GPSトラックログ
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コメント糸魚川市内の地形図記載の山で最後の難関峰に挑戦。水量が少ない晩秋に西飛山ダム経由で往復。ダムまでの県道は崩落のためシャルマン火打スキー場分岐で車止めあり。大規模な崩落個所が2箇所あり車両は通行不能だが徒歩なら可能。ダムは全開状態で何年も貯水しておらず湖底を歩けるがタジマ川を渡るのに長靴必携。逆に言えば水量の少ない晩秋は長靴で渡れる程度の水量。当初は標高590mまでタジマ川を遡上しようとしたが長靴では滑りやすそうで水没しそうな場所があり、途中から大規模な地滑り跡を登った。814m峰までは藪はそれほど濃くはないが、その先は灌木が濃くなる。尾根上には刃物跡が点在し、昔は道があった可能性があるが道形はほぼ消えている。目印も皆無。三角点は御殿山最高点より僅かに南に下った場所にあった。目印、標識皆無。




スキー場手前の県道分岐。車止めは施錠された鎖で繋がれている 県道分岐前に駐車
火打山北面はもう白い 僅かに湯気が出る焼山
道路は補修の形跡あり 2輪の轍がある
中央が目的の尾根 2番目の車止め。これは置いてあるだけ
行く手に斜面崩壊場所が 最初の崩壊箇所。迂回路ができているがそちらも崩壊
崩れた後に手を入れた形跡あり 崩壊箇所手前の大岩壁。落石注意
崩壊箇所は重機で削ったのだろう やっと西飛山ダムが見えた
第二の崩壊箇所。最初は深さ2,3mの滝壺 滝壺をよじ登ると補修された車道
でも路肩は崩れ土砂押し出し、落石で車の通行は不能 地形図でつづら折れの場所は地滑り地帯
霜が降りている ようやくダムが近付いた
ダム左岸の碑。西飛山ダムではなく「飛山堰堤(ダム)」が正確な名称 通行止めのトラロープが下がる
ダム上流側に水は無い。周囲の植生で長年貯水していないのは確か 対岸の工事慰霊碑と工事業者の碑
慰霊碑前から湖底に下る階段あり 泥の上には人間の足跡あり
着地点は流れが洗っているので斜面を迂回 ダム湖底では水量多く長靴では水没だろう
右岸の岩壁上を上流へ ダムを振り返る。岩壁上の藪を下ってきた
ダム遠景 気温はほぼ0℃だがまだ沢に氷は無かった
目的の尾根末端 タジマ沢を遡上開始
場所を選べば長靴で渡渉可能 倒木が流れを塞ぐ。倒木で右岸へ
倒木は左岸側の地滑りが原因 地滑りで小さな堰き止め湖ができていた
堰き止め湖を高巻き。地滑りで藪が消えて歩きやすい 左岸を高巻き中
再びタジマ沢に下りる ここは両岸とも滑りやすそうで遡上を断念。斜面へ
ここを登り始めた 左岸は広範囲で崩れて大規模な地滑りが発生
今でも茶色く濁った水が出ていて不気味 地滑りのおかげで藪が無く快適に高度を上げる
対岸は切り立った崖 地滑り上端。思ったより藪は薄そう
標高650m付近で小尾根に乗る 予想よりは藪は薄い。これなら最初から尾根歩きで良かったかも
標高710m付近。椿のような低い照葉樹の藪 標高780m付近
標高814m峰。ここから藪が深くなる 814m峰の先の痩せ尾根でトラロープ発見!
810m鞍部付近の刃物跡。あちこちで散見された 830m峰西の肩。灌木藪が深い
830m峰西の肩から東を見る。笹は薄いが灌木が面倒 標高820m付近
標高840m付近。また照葉樹が邪魔をする 標高890m付近。これまた照葉樹の藪
御殿山山頂。山頂標識、目印の類は皆無 最高点南に下がった場所に三角点あり
御殿山から見た不動山 御殿山から見た火打山方面
超久しぶりにテープを残す 山頂近くで紛失したナタを発見(一度も出番は無かった)
クロ沢上流部の大地滑り。この付近は地滑りしやすい地質らしい 下山時の814m峰。ここからやっとマジな藪から解放される
標高800m付近。笹があっても薄い 標高660m付近でブナに名前の刻印を発見
名前が掘られたブナは立派 標高630m付近。道の跡か?
標高600m付近のブナ合体。片方は枯れている 標高580m付近
標高560m付近から見た西飛山ダム 木を掴んだら棘だらけのタラノ木だった
標高510m付近の大きな倒木。もう尾根末端は近いが藪が濃くなった タジマ川側に下ることに
崖のような急斜面を下ってきた タジマ川に到着
長靴に履き替える。このまま車まで歩いた ダム手前の岩壁で上を目指す
日当たりがいいからか、藪は深い 根曲がり竹は厄介
往路で下った階段に出た ダム堰堤上
ダム下流の放水路 ダムから能生川下流を見る
ダムからクロ沢を見ている 左岸から西飛山ダム全景
復路も崩壊箇所を越えていく 県道から見た御殿山
最初の崩壊箇所 最初の崩壊箇所手前の大岩壁
第二の車止め 能生川対岸の滝
県道分岐到着。今日は長時間の藪漕ぎで疲れた!

・御殿山は火打山から容雅山、不動山、大毛無山と続く尾根から北西に派生した尾根上にある山で、豪雪地帯で藪が深いと予想される。容雅山、不動山と同じく里から遠くアプローチの悪い山で、残雪期に登るのが厄介な位置にある。私にとって糸魚川市の地形図に山名が記載された山で未踏峰の中では一番厄介な山。逆に言えばここさえ終われば残りは大したことがない。

・ネットで調べても登頂記録は発見できなかった。ただし、最も楽に登るとすれば考えられるルートはただ一つ。西飛山ダムからダジマ川、イカズ谷に挟まれた尾根を登るしかない。このルートの大きなメリットはダムまで県道が伸びているので実質的な藪漕ぎの距離が最短で済むこと。ただし、この県道はシャルマン火打スキー場で封鎖されているため、約4kmを歩く必要がある。また、グーグルの衛星で見ると、途中から廃道化しているように見える。さらには目的の尾根に乗るまでダム湖畔を横移動する必要があるが、地形図を見た限りでは傾斜が急でトラバース可能か怪しい。また、トラバースの難敵は藪で、ここで藪が濃ければ時間と体力を食ってしまう。さらには尾根に取り付くにはタジマ川を越える必要がある。どの程度の水量、川幅、深さなのか情報皆無。最も増水する残雪期はおそらくダメであろうから無雪期、しかも渇水期を迎える晩秋が最適期だろう。

・ルートが長く楽ではないが、確実なルートは上記とは逆に容雅山北西側の1305m峰から往復する方法。残雪期限定だが不確定要素が少なく、雪の状態さえよければ実現性は非常に高い。ただし、おそらく日帰りは無理であろう。

・2ルートを天秤にかけた結果、リスクは高いがルートが短い西飛山ダム経由で無雪期に挑戦することにした。川の横断があるので長靴を用意。今使っている長靴は劣化して外側のゴムが切れて浸水してしまうため、新品を購入した。

・実行当日は朝から快晴で気温が下がり、朝は0℃近くまで冷え込んだ。情報通り県道はスキー場の分岐で車止めあり。ゲートではなく車止めで一見して手で動かせそうだが、施錠された鎖が巻かれて、鎖の端が木やコンクリートブロックに繋がれているので動かすことはできない構造になっていた。入口には人の立ち入りも禁止と書かれているが「バリケードを破損して侵入した場合は警察に通報する」と書かれていて、壊さずに人間が歩いて入る分には黙認状態らしい。もちろん、安全は保障しないだろうが。

・この先の県道は林道と同等の道幅に変わるが舗装は続いていて予想より状態は良好。路面にはタイヤ跡が残っていて、最近でも車が入っていることが分かる。ただし、路面にはひびが入った箇所が多数あり、路面が傾いているようだ。それでも大きな段差には補修がされており、完全に放置された道ではないらしい。でも数か所で大雨による土砂の押し出しがあり車の通行は不可能。砂利には細いタイヤの跡があり、自転車かバイクで入った形跡だろう。

・林道は急斜面に付けられて谷側には立木が少なく、大展望が続く。南側には焼山、火打山、鬼ヶ岳が見えていて、こちらからだと北斜面を見るので新雪で僅かに白い。焼山は僅かに水蒸気が出ていた。

・地形図で県道西側脇の694m標高点下に崖マークがある手前のカーブにも車止めあり。こちらは施錠は無し。このすぐ先で舗装が終わってダートに変わると右手には地形図通り崖が登場、崩れやすそうな大岩壁で路面には多数の落石あり。そしてその先の谷で大規模に県道が崩壊していた。離れた場所から見ると元の県道らしき水平な道が見えるが、そちらは完全に藪に埋もれて廃道化しており、それに代わる迂回路が僅かに上部に作られていたが、そこも派手に崩れていた。ただし迂回路崩壊後にも補修作業を行った形跡が見られて、人が歩く分には問題ないレベルになっていた。ただし、補修後にまた大雨で崩れたのは間違いない。車が通行できるようにするためには大規模な土木工事が必要だろう。

・さらに400mほど進んで次の沢でまた大規模な崩壊現場に遭遇。石垣からして元の林道は土砂に完全に埋まってしまっており、その土砂を削って新たに臨時の車道を造成したが、小さな沢でその道は削り取られて小規模な滝壺ができていた。降りる側は問題ないが対岸はほぼ垂直な崩れやすい砂利の斜面で、ロープが下がっているが足場が悪すぎて使えないため、比較的傾斜が緩い左の谷側から巻いて登った。その先は車が通れるほどの道幅で造成されていたが、その先も路肩の崩落や落石や土砂の押し出しでせっかく補修した道が滅茶苦茶になっていた。それでも歩く分には全く問題ない。

・地形図で県道がジグザグりながらダムに下る区間は、大規模な地滑りで斜面が流れてしまい元の車道の形が残っていないが、地滑りは新しいようでまだ藪が生えていないので適当に歩くことが可能。

・ダム付近は車道が良く残っていた。道路脇の草の葉は白く霜が降りていた。

・西飛山ダムに到着。こちら側(左岸側)には「飛山堰堤」との記念碑あり。あれ? 西飛山ダム(堰堤)じゃないの? 帰ってからこのことを調べたら面白いホームページを発見した。「山さ行がねが」というサイトで、このダムと封鎖された県道について詳細に調査しており、実に興味深かった。事前にこのサイトを知っていれば県道やダムについて事前情報をたくさん入手でき、今回のルートが実現可能性が高いことが分かったのだが。このサイトによればダムの正式名称は碑の通り「飛山ダム」で、なぜ地形図に西飛山ダムと表記されたのかは不明とのこと。

・当然ながらダムは無人だし、電力線も来ていないのでダムの放水ゲートを動かすことは不可能。しかもダムなのに上流に水が溜まっていない! それも長期間貯水していないのは植生から明らかで、ダム上流側は平坦な河原以外は濃い藪に覆われていた。「山さ行がねが」によればこのダムは通常の多目的ダムや治水ダムではなく土地改良法に基づく「防災ダム」という区分で、国土交通省管轄ではなく農林水産省管轄になるようだ(ちなみに現在は法整備により農林水産省単独でダム建設は行えないとのこと)。それと関係するのか分からないが、常時ゲートを開放して貯水しないのが当初からの設計思想で、ダム底の放水ゲートで最大流量を制限し、大雨の時でも一定の放水量以下に保つためのダムらしい。よって貯水されるのは大雨直後だけで、その後は時間をかけて自然に放水される。確かにこんな原始的な運用でも流量の制限できるので水害防止に役立っているのだろう。

・ダムが貯水されていないのは今回のラッキーな点。これなら水面以上の藪に覆われた急斜面をトラバースする必要が無く、干上がった平坦な「湖底」を尾根末端まで歩けるので大幅な労力削減だ。

・ダム堰堤には照明器具設置の痕跡があるが、おそらく工事や試験時にのみ発電機を持ち込んで使う目的だったのだろう。電源が無い今は使えないし蛍光灯は外されていた。なお、堰堤に設置された手すりはぐらつく場所があるので、ダム直下を見下ろすために手すりから身を乗り出さないように。ダム湖底に下る予定の対岸(右岸)は水の流れが直接洗う岩壁で、ダム堰堤直下を下ることはできず、もっと上流側で湖底に出るようなルート取りが必要。

・ダム対岸には工事を担当した佐藤工業のプレートがあった。工事期間は昭和38年9月から昭和44年10月とのこと。その横には工事中に亡くなった人の慰霊碑があった。この慰霊碑前からダム堰堤に沿って湖底に下る階段あり。長靴に履き替えて下り始める。階段の段の高さが通常より高く、帰りの登りがきつかった。下部は増水時に溜まった泥があったが、その上には古い人の足跡があったので、ダム管理のためたまに人が入るようだ。泥や流木からして増水時は湖底から10m程度は水が一時的に溜まるようだ。

・途中で階段を外れて増水で溜まったゴミを横断してトラバース。ダム付近の水の流れは強く、とても川を横断できる状況ではないからしばらく川の右岸側を歩くしかない。斜面の藪は根曲がり竹と灌木。下りなのでここ2週間の藪漕ぎよりはずっとマシ。小尾根を回り込んで上流側へと横移動しつつ藪の中を高度を下げて川縁の岩壁へ。下れるか心配だったがロープ無しで下れる場所を発見し、無事に湖底というか河原に立つことができた。

・そのまま川の右岸を遡上。タジマ川とイカズ谷の合流点を目指す。当初から考えていたことだが、最終的にはこの2つの沢に挟まれた尾根を登るが、藪を考えれば尾根取り付きはできるだけ遅い方が良く、それまでは沢を遡上して藪を避けるのが得策。沢の様子が不明で安全に歩けるか分からないが、可能なら標高600m付近までタジマ川を使いたい。地形図を見ればわかるがイカズ谷側の斜面は急すぎてルートには使えない。

・タジマ川とイカズ谷が分かれると川の水量がぐっと減って、場所を選べばタジマ川は長靴でも水没せずに渡渉可能になった。タジマ川は最初は平坦で広い河原で、流れを見ながら歩きやすい方へ右岸左岸を渡りながら遡上。イカズ谷との合流点から150mほど遡上した地点で左岸側が大規模に崩れてブナの倒木が川を塞いでいた。倒木の下は空間があるので水は普通に流れているが、人間が通るのはかなり厄介。倒木で右岸に渡って倒木をよじ登って乗り越えた。この先も左岸が崩れて川幅が狭まった場所が多いが、崩れた斜面で藪が無いのでかえって歩きやすかった。

・イカズ谷との合流点から200mほど遡上した地点で所謂「土砂ダム」ができていた。左岸の土砂崩れというか、この規模は地滑りと言った方が適当だろうが、それによって川が土砂で塞がれて上流側に池ができていた。規模は大きくないので洪水の原因にはなりそうにないが、歩きやすい河原は水没しているので崩壊して藪が無い左岸をトラバースする。どこまで地滑りが発生したのがちょっと心配だったが、イカズ谷との合流点から300mほど遡上した地点で左岸は元の自然な地形に復帰した。

・このまま無事に遡上できれば良かったのだが、地滑り地形が無くなって河原に下りたすぐ先で両岸とも岩場になり、垂直ではないが流れの縁は湿った状態で斜めになっていて、いかにも滑りそうな。しかも川の深さは長靴では水没確実の状態。濡れてもいい装備ならこのまま遡上できるだろうが、今回はここで沢を諦めて尾根を目指すことにして左岸に登り返した。

・最初は分からなかったが、この左岸も地滑りが発生していて地面が露出した場所が多く、高度を上げても藪が現れないので逆に大助かりだ。最近発生した地滑りではないようで地面は意外と締まっていて、長靴でも問題なく登ることができた。ただし、僅かに掘れた小さな谷には濁った水が流れていて、さすがにこれは気持ち悪かった。まさか今すぐ崩れることはないだろうが。

・地滑り地形上部は結構な傾斜でジグザグに登っていく。上部は草や低い木が生え始めていて、崩れて1,2年程度だろうか。まだ藪とは程遠い状態で快適に登ることができた。地滑り地形の上端は標高650m付近であった。そこで小尾根に乗る。

・いよいよ藪漕ぎの始まりかと思ったら、尾根に乗っても思ったよりは藪が薄く歩きやすかった。これならタジマ川を遡上するよりも最初から尾根に取り付いた方が正解だったらしい。帰りは尾根を下ろう。

・標高710m付近で主尾根に乗るが、この付近は尾根がばらけているので帰ってからGPSの軌跡で分かっただけで、現場では太い尾根に合流した感覚は無かった。逆に言えば下りではこの付近は進行方向に要注意だ。

・この尾根は背の高いブナが中心で地面付近の藪は濃くないが、たまに椿のような葉っぱの背の低い照葉樹が茂った場所がある。濡れていたら突っ込むのはイヤらしいが今は藪は完全に乾いているので躊躇なく入り込むことができた。それに照葉樹の密度はまだそれほど高くはないし、藪の区間も短い。恐怖の笹や根曲がり竹はまだほとんど無い。

・814m峰で尾根は左に曲がる。この先の810m鞍部で尾根幅が狭まって特に右側(西側のイカズ谷側)が切れ落ちるようになるが、植生があるのでそれほど恐怖感は無い。僅かな登り返しの箇所で少し崩れた場所があるが、何とそこにはトラロープが! 見た目ではそれほど古くはなく、おそらく設置されてから数年程度だろう。ロープなど無くても通過できる場所なので、道が無い藪山に慣れていない人が設置したのだろう。その後、人の手が入った形跡がないか探しながら歩いたら、刃物で枝を切った平らな切り口を数か所で発見した。目印等は気付かなかったが、少なくともそこそこの人数がここに入ったことがあるのは間違いなさそうだ。先述の「山さ行がねが」によると、御殿山で「つちのこ」の目撃情報があり過去に探索が行われたことがあるとのことなので、その時代のものかもしれない。その事実を知っていれば私も「つちのこ」を探したのだが(笑)

・トラロープの先で急激に灌木藪が濃くなり、進行速度が大幅に低下する。ここでも笹は脇役で矮小な木が藪の主役だ。例の「椿もどき」の藪は密度を増し、突破に苦労するようになる。特に830m峰周辺が灌木が濃く、尾根上に根曲がり灌木が枝を広げている場所も。それでも810m鞍部で西側の展望が開ける場所が1箇所あった。

・830m峰から先も厳しい灌木藪が続き、徐々に体力を削られていく。たまに笹が混じるがあくまでも灌木が主体のままで漕ぐのが大変だ。今回のルートは標高差で見れば大したことがないが、藪があるので常念岳日帰りよりずっと疲れた(笑)。それでも先週の角助山や先々週の栃尾山の笹と比較すればまだ楽だ。ただしそれらの山と違って藪が延々と続くので精神的&体力的なダメージが蓄積していく。

・御殿山山頂手前、尾根が右に直角近く曲がる890m肩は小ピークを構成しており、最初はここが山頂だろうと思って周囲に三角点がないか探したが見当たらず、GPSで山頂までの距離を確認すると約100mと出てがっかりした。藪が濃いので先にピークがあるのか分からないが、尾根地形ははっきりしているのでその方向へ低い照葉樹の藪をがむしゃらに進むと、照葉樹の藪が薄まって明るい紅葉した落葉樹に変わり、前方に明瞭なピークが登場。今度こそ御殿山山頂だった。

・三角点は真の最高点より少し南に下った場所に設置されていた。周囲には三角点以外の人工物は皆無。山頂標識はおろか、目印のテープ類も皆無だった。山頂は落葉樹林の隙間から不動山と火打山方面を見ることができるが、枝が邪魔ですっきりとした展望ではない。三角点付近は灌木も少なく小さな広場で休憩にはちょうどいい場所だった。これだけ疲れた山も久しぶりで山頂で休憩。今日は快晴で気温も適度で日向ぼっこが心地いい。ラジオを聞きながらのんびりと過ごした。

・帰りがけに山頂の細い立木にテープを残した。こんなことをしたのは超久しぶり。最近はほとんど人が登らない山でも何も残さなかったが、御殿山なら目にする人はもしかしたら他にいないかもしれない。いったい何年持つのか不明。これが木に巻きついている間にDJF氏あたりが登ってくれるだろうか。

・ここは標高が低いので蔓藪の存在も予想されたため、今回は出発時にナタを持ってきた。ダムまではザックの中に入れ、その後はウェストポーチのベルトに通して「脇差」のようにいつでも取り出せるようにしていたが、蔓が無かったわけではないが思ったよりも少なく、登りではナタの出番は皆無だった。山頂で休憩を終えて出発時にナタの存在を思い出してザックやウェストポーチ周囲を見渡したが無い! どうやら灌木藪に絡めとられてしまったようだ。見つかるとは思えなかったが山頂出発時に注意深く見ながら歩いたら山頂直下に落ちていた。ベルトに通すための革製のループが切れていた。それだけ灌木の抵抗が大きかったということだろう。

・帰りは尾根を末端まで下ってみることに。下山とは言え814m峰までは大きな下りは山頂近くの1か所だけで、他はほとんど横移動なので帰りの藪漕ぎも相変わらずきつかった。しかし814m峰を越えると明らかに藪が薄くなり格段に歩きやすくなりスピードアップ。ただし標高750m以下では尾根がバラけてルート判断が難しくなるので注意が必要だった。幸いにしてここまで来るとブナが中心の背が高い落葉樹林帯となり、紅葉&落葉で前方の視界がそこそこ効くのでダムがいい目印になった。ダム右岸端目掛けて下っていけばいいので方位磁石を出さずに済んだ。

・帰りがけに人間の痕跡を探しながら歩いたら、標高660m付近の立派なブナの幹に人名らしき文字が彫られているのを発見。「山中?(?は判読不能」と読めた。この付近は道の痕跡ではないかと思えるほどの筋が見られた。標高600m付近では生きているブナと枯れたブナ?の「合体木」あり。枯れ木の方が立派であった。

・尾根末端が近付くと逆に藪が濃くなってきた。尾根が細くなると尾根上に大きな倒木が登場。その先も藪が濃さそうなので河原に下ろうと左右を見たが、イカズ谷側は河原までの距離が少々あり藪の区間が長そうなので、短距離で河原に下りられそうなタジマ川に下ることにした。

・結構な急傾斜で特に最後は崖状だったが、草を掴んで強引に河原に降り立った。下ってきたルートを見上げると登ろうとは思えないような場所だった。

・タジマ川縁で長靴に履き替えてタジマ川を2度渡ってダム近くの低い岩壁に到着。僅かな足がかりで上に登り、その後は根曲がり竹藪を越えて急斜面をよじ登る。増水で流れ着いた枯れた芦が固まった地帯はその下がスカスカで足場が定まらず苦労させられた。小尾根を回り込むと往路で使用した段差の大きな階段に出て藪から解放。階段をゆっくり登ってダム堰堤に出た。これでやっと普通の道歩きになる。まあ、県道には多少崩れた場所があるが、これまでの藪や急斜面とは比較にならないほど楽だ。

・帰りは長靴のまま県道を歩いた。時々振り向いて御殿山へ続く尾根を眺める。遠目に見ると紅葉したブナに覆われたきれいな尾根なのだが、その下にはきつい藪が隠されているのだった。当然だが県道でも人に会うことはなく車止めに到着。いつの間にか日が陰って寒くなった車の中で腹ごしらえした。


まとめ

 西飛山ダム、正しくは飛山ダムに続く県道の後半は崩壊が激しいが、ダム管理のためか補修工事をしており歩く分には危険が無い程度を保っている。ダムは常時空っぽで湖底を歩くことが可能なので御殿山に続く尾根に乗るのは比較的楽だが、タジマ川を渡るために長靴が必要。もちろん濡れていい靴でジャブジャブ渡ってもいいだろう。ただし残雪期は増水が予想され安全に渡れる水量なのか不明。尾根上の藪は814m峰までは比較的薄いが、その先は濃い灌木藪なので覚悟して臨むこと。

 

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